6月2日に第4回有識者会議が開催され、提言のまとめに向けた議論がされる予定です。提言に向けた要請を提出しました。
要請文提出についての報道
東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20120529/CK2012052902000128.html
毎日新聞
http://mainichi.jp/area/tochigi/news/20120529ddlk09040089000c.html
要請文は、以下です。
要請文提出についての報道
東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20120529/CK2012052902000128.html
毎日新聞
http://mainichi.jp/area/tochigi/news/20120529ddlk09040089000c.html
要請文は、以下です。
2012年5月28日
栃木県
知事 福田富一 様
放射線による健康影響に関する有識者会議
座長 鈴木 元 様
委員 有阪 治 様
同 楫靖 様
同 香山不二雄 様
同 菊地 透 様
同 児玉哲郎 様
同 堀口逸子 様
「放射線による健康影響に関する学習会」参加者一同
原発震災から子どもの未来を考えるネットワーク
代表 真鍋辰彦
低線量被曝を考える講座実行委員会
申入代表 深見史
放射能から子どもたちを守る ひまわりとちぎネット 小山の会
代表 中妻道貴
放射能から子どもたちを守る ひまわりとちぎネット 壬生の会
代表 石崎恵梨子
ママたちでつくるセーフティネット@とちぎ
代表 奥西明子
(以上、五十音順)
放射線による健康影響に関する有識者会議の提言にあたっての要請
1. これまで、3回に渡る放射線による健康影響に関する有識者会議(以下、「有識者会議」といいます)が開催され、①本県における被ばく状況と健康影響の評価、②それに対する具体的な対策が議論されてきました。私たちは、3回の有識者会議で議論された内容、また、県に対してなされた提案については、基本的に妥当な内容であると考え、県に対しては、提案の速やかな実施を求めるものです。そして、より充実した対策を実施するため、以下の項目について要請するものです。
その前提として、私たちなりの有識者会議の議論についての理解の大要を示しておきたいと考えます。なぜなら、有識者会議を傍聴した私たちからみると、県による有識者会議の報告は、必ずしも有識者会議の議論のポイントをわかりやすく伝える内容となっておらず、その原因として、有識者会議の議論の内容について、私たちと県の間で理解が異なる部分があるのではないかと考えるからです。
2.有識者会議の議論の大要
有識者会議のテーマは、①本県における被ばく状況とその健康影響に対する評価、②①に対応した対策です。
ア)①有識者会議の本県における被ばく状況とその健康影響に対する評価としては、大要以下のように認識しています。
㋐事故直後に栃木県に降下した放射性物質の量、直後の食品規制の実施などから、すぐに緊急医療が必要になるような健康影響があると認められる状況ではない。
㋑食品を通じた内部被ばくについては、流通品の限りではほとんどの検体で検出されていないため、現状においては内部被ばくの影響は極めて小さい(出荷制限措置があることも考慮されている)。
㋒ホールボディカウンター等による健康調査については、現状では検出される可能性が極めて小さいことを考慮すると、福島県や独自の健康調査を予定している市町のデータや、食品測定などによる内部被ばく評価を通して推移を見守ることで足り、独自に実施する必要は認められない。
㋓食品による内部被ばく評価については、季節性のある食材や魚類に対する配慮の必要があるため、国・市町村の調査結果も考慮しながら、継続したモニタリングの必要がある。
㋔チェルノブイリで発生した小児甲状腺がんについては、これに絞った議論はありませんでしたが、チェルノブイリとの違い(ヨウ素131の降下量、食品を通じた摂取量)から発生の可能性が低いとすると共に、現状で甲状腺検査をしても兆候が見つかる可能性は低い上、チェルノブイリでも小児甲状腺がんが発生したのは5年後であることを考えると、福島県の健康調査の状況を見ながら判断しても遅くない、すなわち、推移を見守る必要があるとの趣旨の認識(広聴会における鈴木座長の講演、有坂委員、児玉委員の発言)が示されたと考えています。
㋒〜㋔は、本県における継続した被ばく調査の必要性を示したものです。
イ)②対策では、多くのことが提案、また、県の取り組み方に対する指摘がなされましたが、重要な点として、㋐放射線量の可視化、㋑個人としての被ばく量低減のためのリスク管理とその工夫(マニュアル等の作成)、㋒県と市町村の役割分担(県のコーディネート、㋓県民との継続的なリスクコミュニケーションの実施があげられると考えます。
㋐放射線量の可視化では、その前提となるデータの収集(県のデータだけではなく、国・市町のデータも含めた面の評価の必要性)や測定器の性能を考慮するなど、実質的な評価のための専門的な分野に渡る提案も行われ、また、データの収集方法については、㋒県と市町村の役割分担をどう位置づけるかも含め重要な提案がなされたと考えています(第2回有識者会議での堀口委員、鈴木座長の発言等)。
㋑〜㋓については、今後の施策の具体的な課題となる内容で、以下の要請においても触れる部分もありますが、それぞれ重要な問題提起と考えています。また、管轄部署の違いからか報告には記載されていませんが、放射線に対する総合的な部署の設置の必要性(第3回有識者会議での菊地委員発言)や生産者と消費者双方の対策の必要性(同楫委員の発言)など、放射線に対する施策について総合的な視点での指摘もあり、考慮する必要性があると考えます。
ウ)5月14日に県のホームページに掲載された広聴会に寄せられた質問及び意見に対する回答(以下、「回答」といいます)は、委員が依拠する科学的な立場を明確にした上で、論争のある点も踏まえ、結論に至るまでの経過を詳細に述べたもので、これまでの有識者会議の議論を補強する文書だと考えます。
以上のように、有識者会議の本県における被ばく状況と健康評価は、現状においては「健康に大きな影響を与える状況ではない」と推定的な評価をしながらも、①継続した測定・調査の必要性、②被ばく低減のための施策実施、③そのための体制づくり(県の組織、県と市町との関係、県と県民との関係)が議論され、限られた時間ながら実質的な議論がされたと考えています。
なお、私たちは、広聴会で述べたように、低線量・素線量被ばくにおける人体への影響は、現在の科学的知見では未解明の部分もある上、専門家の間でも見解の相違があるため、安全な被ばくはないことを原則に、被ばく低減の施策を求めることに変わりはありません。そして、放射線による健康影響については、個体差の問題を抜きに考えられないことからも、放射線防護の基準は、あくまで現在のひとつの科学的知見を基にした政策的なものであるため、最終的な判断は個人に委ねるべきであり、まず、情報の公開と提供が重要となります。有識者会議での議論は、このような私たちが考える放射線防護に必要な基本的な条件を満たすものであると考えています。
ただし、こうした有識者会議の議論は、必ずしも正しく伝わっていません。その原因の多くは、①県の報告が有識者会議のポイントをわかりやすく伝えるものではないこと、②マスコミの不正確な報道、③インターネット上の不正確な情報にあります。その結果、有識者会議は、本県の被ばく状況について「安全」と評価し、被ばくを低減する対策が必要ないと判断しているような誤った認識を持つ市民も少なくありません。
その背景には、福島原発事故以降の国を始めとする行政の対応の問題が指摘することができます。つまり、福島原発事故と放射性物質の拡散について、国は正しい情報を速やかに市民に示すことをしませんでした。本県においても例外ではなく、充分な情報収集・発信をする前に「安全」を宣言しました。少なからぬ市民は、このような行政の姿勢を見て、「対策をとるつもりがない」「騙されている」「信用できない」という思いを抱き、自力で情報収集や放射線の測定を始めた者も少なくありません。こうした初動の誤りは、いまだに行政のとる対応とその情報に対する不信を招いています。広聴会に寄せられた質問に対する回答にあれだけの時間を要した事実を考えてみても、これまで県はそうした努力を怠ってきたといわざるを得ません。いいかえると、市民の疑問に答えることを欠いた「安全」の宣言がいかに拙速な対応であるかを表しています。
有識者会議の設置も例外ではなく、「県のやることだから、対策をとらなくてよいように安全を宣言するため」という前提で見られている現状があります。この前提は、間違っていますが、上のよう事情を考えれば、ある意味仕方ないことでもあります。
だからこそ、この問題の解決のためには、丁寧な説明が必要になると考えます。
有識者会議の議論が正確に伝わっていないことの一つに健康調査の問題があります。
有識者会議は、ホールボディカウンター等の健康調査について、継続の必要はないと判断しています。しかし、これは、今後の被ばくについてのモニタリングの必要性を否定したものではありません。むしろ、第3回有識者会議で各委員が述べているように、内部被ばくの評価のためにモニタリングの継続の必要性を確認しています。
しかし、なにかを「実施しない」、もしくは「継続しない」という結論は、「対策をとらない」と受け止められるおそれがあり、現にそう受け止めている市民も少なくありません。これは、市民側の情報の読み方の問題を抜きに語れない問題ですが、事故以来の行政の説明不足による不信が大きく影響していることも事実です。
有識者会議の報告や提言にあたっては、こうした先入観があることを前提にわかりやすい内容を発信していくことは、有識者会議の設置目的である「県民の健康不安の払しょく」のためにも重要な取り組みになると考えています。
3. 以上のような認識にうえで、有識者会議の提言にあたって以下の項目について申し入れをします。
⑴市民にわかりやすい提言の作成
⑵市民にできる放射線対策マニュアルの作成
⑶シンポジウムの開催にあたって
⑷中期的展望をもった放射線に関する施策とそのための策定と県・市町村の役割分担
⑸諮問機関の設置
⑴市民にわかりやすい提言の作成
これまで、県のホームページに掲載された有識者会議の報告は、必ずしも議論のポイントやニュアンスを伝えるものではないと考えます。
放射線の問題は、専門的・技術的な分野の問題であり、おのずから専門家と非専門家との用語や表現についての認識の深さや理解の違いがあるため、そのことを考慮する必要があります。また、「健康に大きな影響を与える状況ではないと推測された」(中間とりまとめ)と結論だけを記すことは、その根拠や判断に至るまでの経過を知ることができず、「不安の払しょく」という有識者会議の設置目的に反するものです。
確かに、提言は、専門家集団である有識者会議が行政組織である県に対する意見を述べる文書であり、一般市民を対象とした性質のものではありません。しかし、「不安の払しょく」という有識者会議の目的達成のためには、一般市民にとってわかりやすい内容の提言を作成することは目的に沿った妥当なものであると考えます。
そこで、提言は、結論に至った判断経過とその根拠が明らかになるように、回答で述べられた内容を反映させることを求めます。
ア)例えば、福島原発事故以降、放射線の問題については様々な言論・情報が発信されているため、本県における小児甲状腺がんの発生についても、チェルノブイリの資料を参考にする市民は少なくありません。こうした市民を説明の対象とする場合、結論に至るまでの判断プロセスと共に、チェルノブイリとの相違点を指摘することは、説得的であり、「不安の払しょく」にもつながることにもなると考えます。健康影響、健康調査の必要性等の項目に、回答で述べられている内容を反映させることによって説得的な内容になる、と考えます。
また、こうした判断過程を示してくことは、有識者会議(または、その委員)の見解に対して批判的な市民にとっても議論のための論点が明らかになり、今後のリスクコミュニケーションのための資料にもなると考えます。
イ)被ばく低減のための具体策を明記することを求めます。
各委員においては、すでに議論の前提とされていると思われますが、上のような事情を踏まえ、非専門家である市民が理解しやすいように、被ばく対策についての基本的な考え方の枠組みを明記してください。
例えば、菊地委員や楫委員からも第3回有識者会議で質問があったように、放射線の問題は、県の管轄領域を越えた対応が必要になります。また、被ばく低減の対策については、例えば、①除染の実施、②ⓐ行政・職業団体による汚染食品の規制・制限、ⓑ生産者による減放射能対策、ⓒ消費者による自己防護、といった枠組みが考えられます。このような基本的な考え方を示すことで、例えば、給食の陰膳方式測定は、ⓒの役割を果たし、ⓐとⓑの対策と相まって内部被ばく対策の効果を果たしていることが理解できます。
前述したように、有識者会議の委員は被ばく低減対策の必要はないと考えている、と誤った認識をもっている市民も少なくありません。そこで、有識者会議の基本的な姿勢として①被ばく低減対策の必要性、②そのための対策の基本的な枠組みを示すことを求めます。(その際には、上記のような理由から、有識者会議が外部被ばく・内部被ばくのモニタリング継続の必要性を主張していることは、ほとんど認識されていないため、意識的に強調する必要があると考えます。)
⑵市民にできる放射線対策マニュアルの作成
有識者会議の提案した企画ですが、速やかな作成を求めます。
また、作成にあたっては、市民の編集過程への参加を求めます。なぜなら、これまでも述べましたが、県が市民の不安や疑問の内容・実情を必ずしも正確に把握していないため、発言の趣旨とは異なる受け止め方がされている場合があります。実用性のあるマニュアルにするためには、専門的な判断と共に、市民のニーズを把握することが必要だからです。
具体的には、市民団体のメンバーを非専門家の立場からの監修者として委嘱する等の対応を求めます。
⑶シンポジウムの開催にあたって
シンポジウムの開催については、基本的な事項については、すでに2012年3月7日付で要請をしている通りですが、要請項目3について、以下の通り補充します。
広聴会に寄せられた質問に対して回答がされるまで、かなりの時間がかかりました。内容を読めば、その時間相応の慎重な検討がなされたことは理解できます。しかし、回答がされるまでの間に県のホームページを見た市民には、回答がされない理由がわかりません。シンポジウムにおいても、質問に対する事後の回答がされる場合、回答が保留になっている期間にも検討の経過がわかるような情報の提供を求めます。
これは、有識者会議で迅速な情報提供の必要性(第2回会議の除染についての鈴木座長の発言等)が指摘されていたことも通じる問題です。原発事故とその影響に関する情報は、迅速さが重要です。多少、細部について誤りがある情報であっても、事後に訂正をすることを条件に迅速に公開する必要があります。詳細の部分の誤りによるデメリットよりも、公開によるメリットが大きいからです。しかし、これまでの県の情報提供や私たちの質問に対する回答の経緯をみると、内部の決裁を重視するあまり、情報提供の時期が極めて遅く、また、県が独自に作成する報告等はあまりにも簡潔でポイントを伝える内容になっていません。広聴会の質問に対する回答にしても、回答の内容はともかく、回答の時期、回答までのインフォメーションは、市民の行政に対する不信感を助長させるものです。
「不安の払しょく」という目的に添って、県の情報提供のあり方についても抜本的に検討するよう併せて求めます。
⑷中期的展望をもった放射線に関する施策とそのための策定と県・市町村の役割分担
本県における放射線に対する健康影響についての中期的展望をもった対策についての方向性は、有識者会議の提言で示されると考えますが、それを実施する体制づくりが必要です。
以下、当面の課題として3点を要請します。
ア)昨年来、国・県・市町村でそれぞれ放射線対策が行われていますが、より実効性のあるものにするため、適切な役割分担と体制づくりを求めます。第3回有識者会議でも、外部被ばく評価のための情報収集について議論があったように、県と県内市町との情報・意見交換は、極めて不十分です。また、被ばく低減のための施策は、単独部署で実現できるものではなく、県の内部においても横断的な連絡体制が必要になると考えますが、この点についても不十分です。
そこで、県と市町との役割分担を明確にし、横断的な連絡体制を作ることを求めます。
具体的には、①被ばく低減のための基本的な考え方を示し、②県のコーディネーターとしての役割を明確にし、③県内部での横断的な連絡体制、④市町との横断的な連絡組織を作ることを求めます。
イ)以下のような内容の健康調査の実施を求めます。
有識者会議は、本県における内部被ばく評価の方法として健康調査は有効ではないとしています。
ただし、①安心を担保するための健康調査、②データ集積のための定期的な健康調査は、なお有意義であると考えます。①については、例えば、尿検査によるセシウムの不検出の確認することは、不安の払しょくにとって言語による説明と比べて大きな効果持ちます(ある意味これも広い意味での「可視化」のひとつです)。②については、長期に渡る低線量被ばくについては、症例が不足しているため未解明な部分が依然としてあるため必要となります。現に福島県においては、30年計画のエコー検査が実施されています。県北地域では、エコー検査の対象となっている福島県内の自治体と同等、ないし高い空間線量率が計測されており、県単位での行政区分で実施の線引きがされてしまうことは公正さを欠くことからも、一定の空間線量率が測定されている地域では実施されるべきだと考えます。
ウ)県・市町が分担して食品測定の強化充実を求めます。
食品測定の体制は、国・県・一部の市町で行われています。また、本年4月からは食品衛生法に基づく流通品の検査が始まっています。流通品の農産物と学校給食の測定は、食品中に含まれる放射性物質の概ねの傾向を知るためのサンプリング検査として有効だと考えます。しかし、山菜等の流通外の食材、他県からの流通品(特に海産物)についての検査は不十分です。とくに、県北地域をはじめ山間部では、山菜類、野生獣等の流通外の食材が他の地域と比較して多く食生活に用いられています。また、サンプリング検査で放射性物質の検出された品種を生産する生産者、販売業者は、自己負担で放射性物質の検査を余儀なくされています。一部の自治体では食品の検査の無料サービスを始めていますが、放射線の問題に対する基本的な認識について自治体間で温度差があることもあり、不十分です。
そこで、生産者、小売業者、消費者が持ち込みで検査できる機関を最低限でも全市町に(小規模な町の場合、広域で対策をすることも含めて)設置することをはじめ、拡大充実を求めます。
⑸諮問機関の設置
有識者会議の提言する対策を実施していくためには、諮問機関の設置が必要です。そして、被ばく低減の取り組みには、リスクコミュニケーションの問題が重要になるため非専門家の参加が不可欠です。専門家・非専門家による諮問機関の設置を求めます。
以 上
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